子どもが約束を破ったら、どんな罰を与えると、子どもは約束を破らなくなるのでしょうか。
答えは、
「どんな罰でもダメ」
(=約束を守るようにはならない)
です。
どういうことか?
子どもが自分から約束を守ろうとする時って、どんな時でしょうか。
それは、
「子ども自身が約束の内容に納得して、合意している時」
です。
子ども自身も、
「この約束は、自分にとっても必要だ」
「この約束は、自分のためになる」
みたいに思っている時です。
「この約束を破ると、お母さん(お父さん)が怒る」
っていうのは、納得じゃなくて、恐怖です。
恐怖を使うと、子どもは自分の意志では約束を守ろうとはしなくなります。
恐怖を使った場合は、
「約束を守ろうとする」
のではなくて、
「約束を破ることに恐怖を抱くようになる」
のです。
「約束を守ろうとする」
「約束を破ることに恐怖を抱くようになる」
この2つは似ているようですが、全然違います。
この「恐怖」は、
「親に怒られたり、見放されたりする恐怖」
なので、子どもは、
「親にバレさえしなければいい」
って考えるようになります。
つまり、親が恐怖を使った場合は、
「約束を守ろうとする」
のではなくて、
「親にバレないように約束を破るようになる」
っていうこと。
「恐怖を使う」
っていうのは、
「約束を破ったら、親が怒る」
「約束を守るように、親が圧力をかける」
「『もし、約束を破ったら・・・』というように、子どもを脅す」
「約束を破ったら、罰を与える」
というような感じです。
親がこのどれを選んでも、
「子どもは親に隠れて約束を破るようになる」
っていうことです。
子どもは、親を怖れているだけで、約束の意味や目的、メリットを理解はしていません。
なので、子どもの中には、
「約束を守る」
というよりも、
「親にバレさえしなければいい(=約束を守る気はない)」
っていう意識が芽生えるんです。
じゃあ、子どもが自分から約束を守るようになるには、どうしたらいいのでしょうか?
それは、
「その約束に、子どもが納得し、合意すること」
です。
先述のような、子どもが納得していなくて、恐怖を使って守らせようとしている約束のことを
「不平等条約」
って言っています。
不平等条約とは、有名なところで言えば、江戸時代に、日本がアメリカに無理やり締結させられた、
「日米和親条約」
「日米修好通商条約」
っていうのがあります。
簡単に言ってしまえば、日本に不利で、アメリカに有利な条約です。
子どもが約束を守ろうとしない時は、その約束が対等な約束ではなく、親に有利で、子どもに不利な、
「不平等条約」
になってしまっているんです。
子ども目線に立って考えてみてください。
守れば守るほど、自分にとって不利益だったり、不自由になっていく約束を、誰が好き好んで守ろうとするのでしょうか。
不平等条約を自分から進んで守ろうとする子どもなんていませんよね。
親子間の約束が「不平等条約」になっている限り、
親がどれだけ子どもに圧力をかけようとも、
親がどれだけ子どもに厳しい罰を与えようとも、
「子どもが自分から約束を守ろうとすることは無い」
んです。
もし、それでも親が子どもに「不平等条約」を守らせようとするのであれば、いずれ子どもが親に「復讐」を企てます。
そこまで親子関係が悪化すると、親子関係を修復するのはかなり困難になります。
そのことについては、またの機会に詳しく書きます。
子どもが自分から約束を守ろうとするのであれば、まず大前提として、
「親に有利で、子どもにも有利である」
っていう対等な約束になっている必要があります。
つまり、
「その約束を守ることが、子どもにとっての利益や自由に繋がる」
ということです。
ここで1つ注意したいのが、
「親目線での子どもの利益」
ではなく、
「子ども目線での子どもの利益」
です。
例えば、
「子どもの将来のために、子どものゲームを1日1時間に制限する」
っていう約束を考えたとします。
「子どもの将来のため」
っていうと、子どもの利益になっているっぽいですよね。
でも、これは子どもにとっては不利益です。
なんでかっていうと、子どもが「ゲームしたい」って思っていたら、そこにどんな理由があれど、
「ゲームは1日1時間」
の部分が、子どもにとっての不利益になってしまいます。
親がどう思っているかは関係ありません。
子どもが「ゲームしたい」と思っているなら、どんな理由であっても、
「ゲームは1日1時間」
っていうのを設定した時点で、
「子どもにとっての不利益(=ゲームしたい、を制限しちゃう)」
になります。
例えば、父親が、
「俺は家族のために一生懸命仕事しているんだ」
って言って、全然家に帰ってこないし、家にいても家事や育児に全く参加しないとしますよね。
父親目線では、
「家族のために働いているんだから、家事や育児をしなくても仕方がない」
っていう考えです。
でも、母親からしたら、
「仕事はほどほどにして、育児や家事を一緒にやってほしい」
って思ったりする人も多いんじゃないでしょうか。
それを旦那さんに言っても、
「いやいや、俺は家族のために働いているのに、これ以上、さらに何かやれというのか」
みたいに返してきたら、イラっとしますよね。
「あなたのため」
っていう言葉は、大抵の場合、
「相手のためにはなっていない」
んです。
いくら親が、
「子どもの将来のためだから」
って言っても、子どもがやりたいことや、子どもの気持ちに反することを約束にしてしまうなら、それは
「不平等条約」
なんです。
そこで、僕ら親が何を考えないといけないか?っていうと、
「なぜ、その約束を結びたいのか?」
です。
「ゲームは1日1時間」
っていう約束を例にとってみましょう。
これを約束させたい場合、まず考えることは、
「なぜ、自分は、子どものゲームを制限したいと思っているんだろう?」
です。
「社会通念上、当たり前に必要な約束」
ではなく、あくまでも、
「親である自分が、この約束を守らせたいと思っている」
って考えます。
こう考えることで、少しずつ子どもの気持ちが理解できるようになったり、子ども目線でも物事を考えられるようになります。
それによって、「子どもが納得する約束」というものを考えられるようになります。
「なぜ、自分は、子どものゲームを制限したいと思っているんだろう?」
そう考えた時に、思いつく限りの答えを考えます。
例えば、
「勉強をすることで、子どもの将来の選択肢を増やしたい」
って思ったとしますよね。
1000円しか持っていないと、2000円のものは買えないけど、
10000円持っているなら、それで2000円のものを買ってもいいし、300円のものを買ってもいい。
そんな感じの説明をして、
「だから、勉強するのが大事なんだよ」
って伝えるとします。
「勉強をして、将来の選択肢を増やすこと」
って子どもにとっての利益になりますよね。
子どもにとっての利益であるならば、それを「約束」という形で縛る必要はないはずです。
約束にしなくても、子どもの利益なんだから、子どもが理解できたら、子どもが勝手に勉強を始めます。
なぜ、約束の形にならないかと言えば、
「子どもの将来の選択肢が増える」
っていうのは、子どもの利益ではあるんですが、
「親の利益ではないから」
です。
不平等条約とはまた違うんですけど、
「子どもの利益であって、親の利益ではない」
っていうのも、親子間で対等じゃないから、約束にはなりません。
約束として成立するのは、
「子どもの利益でもあり、親の利益でもある場合」
です。
漫画とかで、仲良しな2人が離れ離れになる直前に、
「また会おうな!約束だぞ!」
って再会の契りを交わすことがありますよね。
これは、
「再会すると、自分にとっても、相手にとっても嬉しい」
から約束として成立します。
お互いにとっての利益だからこそ、約束になり得ます。
まとめると、こんな感じ。
親にとって利益・子どもにとって利益
⇒約束が結べる
親にとって利益・子どもにとって不利益
⇒不平等条約(教育的によろしくない)
親にとって不利益・子どもにとって利益
⇒親の自己犠牲
親にとって不利益・子どもにとって不利益
⇒共同の課題
子どもにだけ利益になる
⇒親が干渉する理由が無い(=親の過干渉)
「ゲームは1日1時間」
みたいな子どもの遊びの制限は、
「不平等条約」
か、
「親の過干渉」
にしかならないということですね。
子どもと約束をする時には、
「なぜ、その約束が必要なのか?」
をちゃんと子どもに説明をして、しかも、それが
「ちゃんと子どもの利益にもなっていること」
(親の利益にもなっていること)
も説明をします。
これを説明することがめちゃくちゃ大事です。
「子どもが約束を守らないんです」
って悩んでいる親のほとんどが、ここの説明を端折っていたり、子どもが理解&納得していないのに、話を次に進めちゃっているんです。
約束の内容を子どもが理解していて、
約束の内容を子どもが納得している。
そしたら、わざわざ「恐怖」なんぞ使わなくても、子どもは自分から約束を守ろうとしてくれます。
ましてや、罰なんて与える必要もありません。
しかも、こういう約束の結び方をすると、子どもは自分から約束を守るし、親子の絆もより強くなります。
ぜひ、
「なぜ、その約束が必要なのか?」
「その約束を守ることが、どれほど子どもの利益になっているのか?」
をしっかり考えて、子どもが納得するまで言葉を尽くして説明してみてくださいね。